ミュージアムグッズ愛好家に聞いた
「こんなグッズは買ってしまう！」

───大澤さんの著書、楽しく読ませていただきました。大澤さんはどうして、ミュージアムグッズがお好きなんですか？

大澤夏美さん（以下、大澤）　スタートはやっぱり博物館が大好きで…。ミュージアムグッズは、ただの雑貨じゃないところが好きです。学芸員さんや研究者の英知が詰まっているところがすごくかっこいい。
私、博物館の中の人たちをとってもリスペクトしているんです。彼らのアウトリーチのやり方って、展示だったり、イベントだったり、いろいろあると思うんですが、ミュージアムグッズもアウトリーチの一つになればいいなと思います。
ミュージアムグッズは、ドキドキします。研究者の方の…（想いや研究成果に）触れているんだと思うと。

───それが一般の人と、プロの知をつなぐわけですもんね。

大澤　そうそうそう。

大澤　ミュージアムグッズは、来館者にとっては感動や体験を持ち帰るメディアのようなものなんだと思います。それだけでなく、博物館にとってグッズは、それを通して「知ってもらう」という社会的使命を果たす力があるものだと信じています。

───展示を見たときの感動と、それが見事にグッズに落とし込まれていたとき、なんだか興奮してしまいます！実物は持ち帰れなくても、グッズを買うことでその時の感動を思い出せる。いいですよね。

大澤　そう、面白いですよね、グッズって。来館者向けのサービスと捉えられがちではあるんですが…。博物館側にとっても守りたいことや大事にしたいことがあって、それをグッズの力でちゃんと伝えられることを知ってもらいたいです。

───大澤さんが「こんなの買っちゃう」基準はありますか？

大澤　やっぱり、オリジナルグッズは必ず見ます！買っちゃう基準でいうと、学芸員さんなどが監修や開発にかかわったグッズは買ってしまいます。展示とのつながりを感じさせるグッズもいいなと思いますね。

───独自の収蔵物や視点を活かしていたり、伝えたいことを伝わるデザインに落とせているグッズも、出会うとぐっと来ますよね。

大澤　分かります！全部含めて、こだわりを持って作られたオリジナルグッズはいいな、と思います。

ミュージアムグッズ愛あふれる大澤さんに、お気に入りのミュージアムショップやグッズを聞いてみました。

大澤　職人さんの伝統的なものづくりを支えてきた大工道具や組木、石器時代から道具はどう変わってきたのか…などが展示されています。

───それは面白そう…！どんなグッズが売っているんですか？

大澤　フィリップ・ワイズベッカーさんというアーティストが道具を描いたグッズや、家具職人さんが作るミニチュアの大工道具が販売されています。大工道具を収集した日本で唯一の博物館だけあって、ミニチュアでも丁寧に作られていて…とてもかわいいんです！

大澤　こちらはミュージアムショップを研究している人なら知らない人はいないくらい、取り組みが先進的です。認定NPO法人大阪自然史センターがミュージアムショップを運営しているのですが、学芸員さんとの信頼関係がとても強くて。科学的に正しくないものは置かない、博物館側が恥じるようなものは置かないという審美眼を持っている。その人たちが選んだものは間違いなく、信頼のおける人たちですね。

「なにわホネホネ団」という団体のグッズも取り扱っているので、骨にまつわるグッズも興味深いです。自分たちの強みを活かしている感じがしますね。

大澤　最後は、ストーンサークル（環状列石）で有名な遺跡なのですが、そこのビジターセンターでもグッズが販売されています。かぶると土偶になれるニット帽とかが有名で、個性的なところだな、と思っていたんですけれど。
新しいの作ったよと連絡をいただいたので見てみたら、マグカップの上にかぶせるシリコンのフタ、あれがストーンサークルになっているんです！マグカップもちゃんと土の中がどうなっているか分かるようになっていて（笑）

───え～！凝ってますね！！

大澤　ストーンサークルをグッズにするってなかなかないじゃないですか。売れ筋だから、ではなくて…。有名な資料を所蔵していなくても、ウチはこれだからって言える博物館さんはかっこいいと思います。

マニアックですが、とりあえずこの３つ。

───もしご自身でミュージアムショップを運営するとしたら、何を作りたいですか？

大澤　ミュージアムショップのミュージアムを作ったら？ってよく言われるんですよね。レシートも全部保管してあるので、できるかも…！？と思っています。
そこでもしショップをやるとしたら、例えば、博物館の中にネイリストさんが来てくれたら面白い！って、先日同僚と話していました。最近、絵画の絵柄のネイルシールが販売されていますが、ネイリストさんが展示品の解説をしながら、展示品にちなんだネイルをしてくれたらいいなと。

───惑星を一個ずつ描いてもらうとか？

大澤　そうそうそう！異常巻きアンモナイトの説明をしながら描いてくれるとか！すごく楽しくないですか！？

───楽しいですね。ライブですね！

大澤　科学博物館とかに行くと、サイエンスコミュニケーターという、広く研究を知ってもらう仕事をしている人がいるんです。その派生した形で！
もし自分がショップをやるんだったら、ただものを売るだけじゃなく、ものを通じたコミュニケーションの場にしたいって想いはあります。面白い研究をしている方ってたくさんいらっしゃるので、そういう方のお話を…ネイルしながら聞きたい！とか考えます。ワークショップ性、イベント性の強い小売りみたいなことがしてみたいですね。

───ぜひいつか、叶えてください…！

大澤　いや～、夢は広がりますね。

大澤さんと、ミュージアム大好き・デザインフィル社員の熱量が渦巻き、この日はすっかり盛り上がってしまいました。大澤さん、ありがとうございました！（機会があれば、書ききれなかった続きもコラムになるかも…？）

こだわって作られたグッズは、時には「知」を伝え広めていく。私たちもそんなアイテムをプロデュースしていきたいと考えています。