文具好き開発プロデューサーが語る
「ドラゴンクエスト文具屋」開発秘話（前編）

───遂に「ドラゴンクエスト文具屋」が、2022年10月に発売しましたね！今回、ドラゴンクエストの文房具をつくることになったきっかけを教えてください。

青海さん（以下、青海）　ドラゴンクエストは、今年2023年5月27日で誕生37周年になりますが、かつて一大ブームを起こしたドラゴンクエストの「バトエン（バトルえんぴつ）」もこの2023年で30周年を迎えました。バトエンもそうですが、当時のドラクエグッズといえば、鉛筆のほかに、消しゴム、下敷きなど、子どもたちに身近な文房具がたくさん商品化されていたんです。振り返ると、実はドラクエ文房具の歴史は長いんですよね。

かつて、ドラゴンクエストで冒険していた子どもたちは、今は「大人になった勇者」になりました。子どものころ、ドラクエ文房具を使っていたユーザーはきっと「ドラクエ＝文房具」というイメージがDNAとして刻まれているのでは？と思っていて。ドラクエらしい遊びがあって、高品質でデザインも優れた文房具があったら、「大人になった勇者」に受け入れられるだろうなと、5年以上前から考えていました。

実現に向けて試行錯誤したのですが、目指しているクオリティに達する文房具を自分たちだけでつくるのは難しく…。一緒にものづくりをするパートナーを見つける必要があったのですが、正直なかなか見つけられませんでした。そんな中、ノベルティ制作をきっかけにデザインフィルさんと知り合い、御社であれば、温めていた文房具がつくれると感じ、今回ご一緒することになりました。ドラクエでいうと、冒険を共にする仲間に出会った感じです！もう本当に本当に嬉しくて！ついに出会えたー！という喜びでした。

―――ありがとうございます！青海さんは、もともと文房具がお好きなんですか？

青海　はい。実は昔から文房具が大好きで！美術系大学で油絵を専攻していたのもあって、画材屋さんに毎日のように通って、デッサン鉛筆、製図用のペン、紙など、かなりこだわりを持って買い漁ってました（笑）。ものづくりにおいて、ユーザー目線であることが一番重要だと思っているので、自分が大好きだからこそ文具を作る意味があると思っています。

―――今回発売された「ドラゴンクエスト文具屋」は全16アイテムありますが、どうやって選ばれたのですか？

青海　ドラクエユーザーはもちろん、文房具ユーザーにも喜んでもらえるものを作りたかったので、まずは文具のプロであるデザインフィルさんから、文房具ユーザー目線でおすすめアイテムを提案いただきました。

デザインフィル小林（以下、小林）　ずっとダイアリー（手帳）がつくりたいということを青海さんからお伺いしていたので、ダイアリーを中心に一緒に使えるアイテムをご提案しました。ドラクエの世界観をそのまま楽しめるアイテムは何か？ドラクエらしさとは何か？ということを念頭に、社内で繰り返しブレストをしてアイデアを出していきました！ご提案した中から、青海さんとさらに企画とデザイン・仕様を何度も検討し、今の16アイテムになりました。

―――今回のラインアップで特にこだわったアイテムはなんですか？

小林　ダイアリーはやはりこだわりました。私としては、青海さんが「コピー＆ペーストでつくったアイテムにはしたくない！」と仰っていたのが印象的で。週間メモにドット絵のキャラクターがいるんですが、ページごとにキャラの組み合わせが実は変わっているんです！めくっていて飽きない仕掛けになっているのがポイントです。

青海　カバーのデザインもいろいろ考えたんですが、「スライムが手帳カバーになったら」をストレートに表現しました。生地もたくさんの素材の中から選んだのですが、色はもちろん手に持ったときの感触にもこだわりました。

小林　手にしたときのむにっと感が、スライムに似ている感じなんですよね！ずっと触っていたくなる気持ち良さで、なんだか癒される生地です（笑）

青海　それ以外にも、カレンダーの表記や色など細かいところにもこだわっています。作っていく過程で、デザインフィルのデザイナーさんと何度もブラッシュアップしていきました。

―――今回は、パッケージにもかなりこだわったと聞いています！

青海　そうなんです！ボールペンのパッケージは店頭に並べたときに目に留まるよう、側面にゲームのフィールドをデザインしています。積み重ねると、フィールドが広がっていくんです。他のアイテムもこだわっているので、ぜひ手に取って探してみてほしいです。

―――見つけたとき、テンションが上がりました…！ちなみに青海さんが一番愛用しているアイテムはどれですか？

青海　ボールペンですね！書き味がすごくよくて、真鍮ボールペンなので適度な重さ、所有感もあって。手に持ったときの重量感ですっと書ける感じ、手になじむ感じがすごくいいんです。書くのが楽しくなります。
あとお願いしたのが、クリップについているスライムのフチ（角R）を、触ったときに気持ちいい感じにしてくださいということです。安全面はもちろんですが、手触り、物としての所有感がすごく重要だと思っていて。デザインフィルさんの製品を愛用されている方は、そういった細かいこだわりを気に入って、長年使っていると思うんです。

―――細かい部分ですが、そういう一つひとつのこだわりが大事ですよね。今回開発した中で他にお気に入りのアイテムはありますか？

青海　ハビットトラッカーです。存在は知ってはいたものの、今まで使ったことはなく…。今回ご提案いただいて、日々のタスクをクリアしていくというのが、経験値をためてレベルアップするドラゴンクエストそのものじゃないか！と思いまして。名称も『経験値ハビットトラッカー』にして、日々のタスクをゲーム・冒険感覚で楽しめるよ！という思いで作りました。

青海　今の時代、スケジュール管理をアナログでしている人って減っていると思うのですが、ハビットトラッカーはすごく所有感がありますし、アナログで記録していくことでモチベーションがあがるなと。常にこれをカバンや部屋のどこかに置いておくことで、書きたくなるし、達成したくなるんです。「ペンで紙に書く」という行動自体が一つの楽しみであって、スマホやアプリにはない感覚だなと思いました。

青海　あとこれは仕様に関してなんですが、ハビットトラッカーを開くと、180度フラットに開くので書きやすくて！紙も「MD用紙」 で書きやすい！もともと使っていて、すごく信頼している製品なので、手帳もそうですが、単純につくれたことにいちユーザーしての喜びがあります。

小林　ありがとうございます！

―――今回の「ドラゴンクエスト文具屋」というブランド名・ロゴになった経緯を教えてください。

青海　日々、私のアイデアメモ帳にネーミング案を書き出していまして…。ドラクエ世界の町には武器屋、防具屋、どうぐ屋などのお店がありますが、もしその町に文具屋があったら？というアイデアから誕生しました。「ぶんぐや」、「武ん具や」、「武器文防具」といった案もありましたが、デザインフィルさんと検討した結果、最終的には「ドラゴンクエスト文具屋」になりました。

小林　懐かしい！青海さんからネーミング案をいただいたとき、社内では「ぶんぐや」が優勢だったんですが、どういうデザイン、フォントにするのがいいかと考えたときに、漢字の方がおさまりがいいとなりました。

青海　ひらがな・漢字にするかで悩みましたよね！ターゲットも大人向けの製品なので、高級感もあって漢字がいいかなと。バックグラウンド・物語性も感じさせたかったので、本当にドラゴンクエストの世界に文具屋がオープンして、勇者や戦士が買い物している様子が想像できるものにしました。

―――名前の候補をいただいてから、デザインフィルでロゴデザインを提案して決めていったんですね。

小林　デザイナー2名でアイデアを出したあと、私も一緒に検討し、そこから11パターンのデザイン案を出しました。

青海　出していただいた案の中から要素を組み合わせて、徐々に絞っていきました。スライムを入れて、ちいさなメダルはあった方がいいとか、縦書きがいいとか。情報量が多くなると、視認性・可読性が弱まり安っぽくなってしまうので、抑えつつもドラクエらしさを盛り込みました。ロゴにいるスライムは、そのままキャラクターとして使えそうなものにしました。開発メンバー内では通称インクスライムと呼んでいます！

―――たくさん開発秘話が聞けて嬉しいです！ありがとうございます！